みんなでハマろう創作沼。倉戸みとの創作ノウハウ共有サイト。

有名な毒草、トリカブトについて調べてみた


■日本一有名な毒草トリカブト
毒草といえばトリカブトというくらい、創作の世界では有名な毒草。
そんなトリカブトについて、あらためて整理してみました。



■トリカブトって、どんな毒草?
日本三大有毒植物※1のひとつで、この3つの中で最も入手・栽培が容易。
花が綺麗なため、園芸品種も多く、三大有毒植物の中でも最も認知度も中毒者も多い毒草。
しかし、創作の世界ではトリカブト=毒草として描写がいろいろ省略されがち。
今回はそんなトリカブトについて知識を深めるべく、手元の文献をまとめてみました。
(※以下の記述は学術的な目的のために収集したものを一般向けに整理したものです。
 創作のネタとしてのみご利用下さい。)

■どんな毒を持ってるの?
アコニチンなどの神経系に作用する毒をもっていて、呼吸困難や心臓発作を起こします。
具体的にはトリカブトを食べると、口の中が痺れて、嘔吐したりよだれを流したりし、手足のしびれ、全身の麻痺、呼吸困難、不整脈となり、最後に心臓が止まります。
たぶん、中毒死の中でも相当苦しい部類です。
またアコニチンはフグ毒で有名なテトロドトキシンと拮抗作用がある(お互いに作用を打ち消し合う)のは有名。

■トリカブトの致死量は?
トリカブトのアコニチン含有量は季節や品種、自然環境なんかに左右され、かなりバラつきますが、一般的には新鮮なトリカブトの根を1グラム食べると、死の危険があるとされているようです。
アコニチンの致死量※2はマウスに静脈注射でLD50が0.166mg/kg、腹腔注射で0.308mg/kgとされています。

■アコニチンの抽出方法は?
前述の通り、アコニチンの含有量がバラつくため、実験などの際にはトリカブトからあらかじめ、アコニチンを抽出したものを使います。抽出方法には様々な方法がありますが、
粗抽出方法の一例として、アコニチンが「水に溶けにくい塩基性の成分」であることを利用する方法があります。
具体的には、すり潰したトリカブトの根に蒸留水を加えて混合した後、遠心分離して水を取りだすという「洗い作業」を数回繰り返した後、アンモニアでpH10に調製したクロロホルムを加えて混合、クロロホルムに溶けたアコニチンを遠心分離して、クロロホルムごと取り出す「抽出作業」を数回繰り返し、最後にクロロホルムを蒸発させて除去、アコニチンを取り出すという方法があります。
この粗抽出状態ではアコニチン以外の成分も残っているため、これをもう一度適当な溶媒に溶かして、カラムクロマトグラフィーなどでさらに精製して実験に使います。

■死因は分かるの?
死後、胃の内容物にトリカブトが含まれている場合はもちろんのこと、押田教授の著書によれば、死後検死解剖で血液が保存されていれば、これを分析することで
トリカブトのアルカロイドが検出できるとのことです。
またホルマリンに保存した臓器からもトリカブトの成分の有無を検討可能らしいです。

■入手方法と栽培方法は?
トリカブトは、綺麗な花を咲かせるため、園芸用としても人気があり、栽培が盛んです。
比較的、栽培難易度が高めの植物ですが、一般家庭でも十分に栽培可能です。
本州の東北から中部の山地に自生しており9月~10月であれば花も咲いているため判別は容易ですが、自然保護の観点から栽培市販されているものを栽培すると良いでしょう。
園芸用はトリカブトだとイメージが悪いのか、学名の「アコニタム」という名前で販売されています。
「アコニタム 販売」でググればカンタンに見つけられます。

具体的な栽培方法(綺麗な花を咲かせるための栽培方法で、毒の含有量を増やすための方法ではない)は以下の通り。
・新鮮な種子を少量の湿らせたピートモスと一緒にビニールパックに入れ、
 冷蔵庫で6週間冷やして休眠状態にさせる。
・移植する場合は、根を傷つけないように掘り上げ、なるべく早く移植します。
・3月~4月頃になるべく大きくて深い鉢で、鹿沼土:小粒赤玉土:小粒軽石を等量混ぜた水はけの良い用土に植えます。
 また、成長を急ぎたい場合は上記の用土に2割ほど腐葉土を混ぜ込むと良いでしょう。
・直射日光を避けた半日陰で栽培します。一日6時間以上の日照があればOKです。
・栽培温度は5℃~25℃の範囲。暑さに弱いので夏場は室内にいれましょう。
・乾燥にも多湿にも弱いので、水やりは気温と成長をみながら、少量をこまめにあげると良いでしょう。
・夏から秋にかけて、開花します。花が落ちた後に種子を回収するとよいでしょう。
・多年草なので、春頃に植え替えると大きく成長します。

■毒殺以外には使われないの?
古来、主にヨーロッパでは、抽出したものを矢に塗って、「矢毒」として用いられたり、神経を麻痺させる効果から、軟膏に加工して外用薬として鎮痛剤とする方法、
また、鎮静剤として、アルコール抽出物を数滴経口投与するという方法があるようですが、現在では中毒事故の危険性もあり、一般的ではありません。
また漢方では加熱処理して減毒したものを使います。
現在でも使われている例としては、ホメオパシー※3に利用されることがありますが、レメディとして利用されるのはトリカブトの成分ではなく「概念」なので中毒事故は少ないようです。
(トリカブトのレメディには、トリカブトの成分は「ほぼ」入っていません)
一般人の観賞用と、犯罪者の毒殺目的以外にはほとんど使われません。

■結局、トリカブトって危ないの?
園芸愛好家が多い事から分かるように、トリカブトについて熟知した上で取り扱えば、危ないものではありません。
むしろ、美しい花は生活に彩りを与え、身近に目にしていれば、食用植物と見分けられることで中毒事故を未然に防ぐこともできるでしょう。
しかし、「危ない!怖い!知りたくない!」と知識アレルギーを起こしているヒトにはこんにゃくゼリーですら危険です。
私は、それが何であれ正しい知識を持って取り扱うことが大事なんだと思います。


※1日本三大有毒植物
いわゆるトリカブト、ドクゼリ、ドクウツギの三種。
ドクゼリについてはあまり市販されてない上に、水生植物なので採取・栽培がちょっと面倒、ドクウツギは植え替えに極端に弱いのと、環境開発により個体数が減って地味にレア植物になっているため、現在では一部の愛好家と研究機関を除いて、ほとんど人工栽培されていません。
余談ですが、トリカブトの属するキンポウゲ科の植物はほとんどが有毒。

※2致死量
一般的にLD50という単位がよく使われる。例えばLD50が0.166mg/kgなら、体重1キログラムあたり、0.166ミリグラム(体重60kgなら9.96mg)摂取すると、50%の確率で致死する。
逆に言えば、LD50の致死量を摂取しても50%は統計学上「死なない」ので、毒殺目的の犯罪者は致死量の10倍とかをターゲットに打ち込んだり打ち込まなかったりするらしい。

※3ホメオパシー
有毒物質などの成分を、水や乳糖で極度に薄めたもの(レメディ)を投与することで人体の自然治癒力を引き出すという思想。
科学者からは、疑似科学であり(科学的に)間違った知識を流布して医療行為を阻害する「悪」とされることが多いです。
個人的には、成分を際限なく薄めたレメディには、「元の成分」はたしかに入っていませんが、「成分を混合した」という概念が残っており、この「概念」で人体に影響を与えるという考え方は実に呪術的で興味深いです。
ただ一部では死亡事故とかマルチまがいみたいな事例もあるので、私は科学者としてはもちろん、呪術者としても一概に賛成もできないところ。


参考文献
毒物・中毒用語辞典/化学同人(2005)
死人に口あり/実業之日本社(2004)
ACONITINE/chemicalland21.com(2012)
Determination of aconitine alkaloids in aconitum roots./Planta Medica (1983)

0 件のコメント:

コメントを投稿